New Currents Award
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GRAIN IN EAR (中国) by Zhang Lu |
Asian Filmmaker of the Year |
NHK (日本) |
国際批評家連盟賞
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THE UNFORGIVEN(韓国) by Yoon Jong-bin
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NETPAC賞
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THE UNFORGIVEN(韓国) by Yoon Jong-bin
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観客賞 |
THE UNFORGIVEN(韓国) by Yoon Jong-bin |
*日本からの出品作品はこちらから
◆概観◆
10周年の記念の年である今回は、準備の段階から映画祭側の気合の入れようは並々ならぬものがあった。各ゲストは通常到着時に公式カタログや上映プログラムの入った「映画祭バッグ」を受け取るものだが、今年はその中には例年どおり公式カタログや上映プログラムとともに、映画祭の編纂した重量感ある「映画祭10周年史」2冊が含まれていた。
(写真右:映画祭期間中は、水族館の一部も映画祭のカウンターなどとして利用される)
数々の華やかな催しが連日連夜繰り広げられ、またチケットセールスや観客動員数などさまざまな意味で過去最大の規模となった。アジア各国(特に日本)での韓流ブームが追い風となって、海外からの取材陣、また観光客も急増、特に開会式の日には日本からのツアー客と思われる人々の姿もあった。かねてより近隣のアジア諸国からは言うまでもなく、欧米からのゲストの招聘にも熱心であったが、フランスやドイツ、カナダなどは大使館や大企業が主催・共催、国単位での趣向を凝らしたパーティが催され、それなりにお国柄を出した料理や(主に韓国の)スターの来場で場が盛り上がった。日本も今年初めて文化庁がパラダイスホテルにてレセプションを開催。当初の予定を大きく超えた人数が集まり、幸先の良い出足を見せた。
庶民の街Nampo-dongエリアでは観客に向けた公開イヴェントを多数企画。韓国の俳優を中心に上映作品の出演者・監督の挨拶が行われうる際には10代、20代の学生が殺到。ソウルから来る人々も多いという。日本からは「春の雪」の行定勲監督・妻夫木聡氏、「ホールド・アップ・ダウン」のSABU監督、V6のメンバーが壇上に登場、たいへんな喝采を浴びていた。そもそも釜山映画祭のメインの観客はとにかく若い。10代、20代の人々の中ではすっかり年中行事になっているに違いない。仲間たちとの遊びの一環になっているようで、ひたすら楽しそうである。その半面、「大人」の観客の決定的な不在感は否めない。チケットがインターネットで瞬時に完売してしまうことと関係があるのだろうか。
オープニングとクロージングセレモニーに一般客も参加できるようにしたのも市民にはうれしい試みであっただろう。韓国を代表するベテラン俳優ハン・ソッキュ氏がオープニングを、アン・ソンギ氏がクロージングの司会を担当(ちなみにアン氏は釜山映画祭副代表にも就任)。イ・ビョンホン氏をはじめ、旬の若手俳優たちも続々来場しては映画祭をサポートするコメントして、場を盛り上げる。韓国映画界が一丸となってバックアップしているという強烈な熱意を感じる。
映画祭ゲストの立場で言うと、毎年の懸案であった、鑑賞チケット入手の困難さは格段に改善されたことに安堵した。シネマコンプレックス2館で同時に同作品を上映することで収容人数を倍にしたことや、メイン上映館からタクシーで5分ほどのところのシネマコンプレックス・PRIMUSを新たに会場として加えたり、と映画祭側の工夫が感じられる。苦情として挙がった問題を改善しようという意欲はあちこちに見受けられた。
(写真左:映画祭に付随して行なわれた各種イベントの模様)
今回、映画祭ゲストたちから聞こえてきた疑問(不満)の中で注目すべきは「上映開始後はたとえ1分遅れただけだとしても、決して入れてくれない」というものだった。これについてゲストたちの大方の意見は「5分遅れくらいまでは入れてもいいのではないか」というもの。確かに途中入場は鑑賞の邪魔になるとも言えるので、意見が分かれる難問である・・・。
◆日本からの出品作品◆
集客を十分に期待できるメジャーな作品、やや難解かつ気骨の感じられるインディーな作品、さまざまな日本映画が選出された、ヴァラエティに富んだセレクションとなった。特にドキュメンタリーや短編などで渋めの作品が目立った。そして今年もまた、地の利を生かしてほとんどの監督、多くの出演者やプロデューサーも訪韓し、質疑応答や舞台挨拶に積極的にのぞんでいた。広くアジアの名作を集めた特別部門、アジアンパンテオンでは「浮雲」をはじめ、4作品がアジア担当プログラマー、キム・ジソク氏の強い要望によって上映が実現したのも特筆すべきことである。
◆表彰◆
第3回アジアン・フィルムメーカー賞(顕著な功績を残しているアジアの映画作家に贈られる)はNHKアジアフィルムフェスティヴァル事務局を擁するNHKに授与された。同フェスティヴァル事務局は資金的に映画製作の困難なアジアの国の才能ある監督との共同制作を通じて、秀作を発信し続けてきた。
また、韓国映画の海外での普及に大きな貢献を果たしたとして、カンヌ映画祭及びベルリン映画祭がコリアン・シネマ賞を受賞、それぞれティエリー・フレモー氏、ディーター・コソリック氏が自ら式典に出席、世界を代表する映画祭のトップのダブル受賞は壮観であった。
‘賞’とは性格が異なるが、毎年恒例のハンドプリンティング(手形)を納める映画人として、鈴木清順監督が選ばれた。82歳という高齢で体調不良も囁かれる監督なだけに渡航が危ぶまれもしたが、最新作「オペレッタ狸御殿」も公式上映されるとあって訪韓を熱望、酸素マスクをつけて釜山入りした。同監督はNampo-dongのハンドプリンティングステージ上でも独特のユーモアで場を沸かせた。
◆韓国映画◆
釜山映画祭のこの10年間の成功は、明らかに韓国映画の隆盛が大きな原動力となっている。「(2,3年前に較べ)韓国映画のピークは過ぎた」といった言葉が聞こえてきたりもするが、Korean
Panoramaセクションにはそれでもまだまだ粒よりな作品をいくつも見つけられる。New Currents賞こそ逃したものの、NETPAC、国際批評家連盟賞、そして観客賞を獲得したYOON Join-bin監督のデビュー作「THE
UNFORGIVEN」は今回の釜山映画祭で最も話題にのぼった韓国映画といえるだろう。
◆PPP◆
釜山映画祭のもうひとつの目玉である第8回PPP(プサン・プロモーション・プラン)は、映画祭中盤の10-12日にかけて会場はパラダイスホテルにて展開された。予め選ばれていた19カ国からの27のプロジェクトのプレゼンが行われた。今年もインダストリー・センターを完備、セールス業者に向けての便宜を図った。
来年はマーケットを併設するとの発表がなされた。今年も既にビーチサイドに「フェスティヴァル・カフェ」、やKOFICやコダックのテントを設けたり、ゲスト用の映画祭オフィスも水族館の地下に移すなど、ビーチサイドを映画祭の施設の集まっている景観にしようという試みがなされていた(カンヌ映画祭をどことなく髣髴させる)。世界の主だったマーケットの関係者たちに参考意見を求めるなど、準備も周到におこなっているようだ。どのような形を取ることになるのか、興味深い。
(写真:ビーチ沿いに設けられたKOFICなどのオフィス)
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