釜山国際映画祭
10th PUSAN International Film Festival
2006/1/25-2/5

長編劇映画部門
 金豹賞
 DAS FRAULEN by Andrea Staka (Switzeland/Germany)
審査員特別賞
 HALF NELSON by Ryan Fleck (USA)
最優秀監督賞
 Laurent Achard for LE DERNIER DES FOUS
                     France/Belgium)
銀豹賞
(新人監督賞)
 L'ANNEE SUIVANTE by Isabelle Czajka (France)
最優秀女優賞  Amber Tamblyn for STEPHANIE DALEY
            (by Hilary Broughter/USA)
最優秀男優賞  Burghart Klaussben for
 DER MANN VON DEN BOTSCHART

        (by Dito Tsintsadze/Germany)
Filmmakers of the Present 部門
金豹賞
 VERFOLGT by Angelina Maccarone (Germany)
審査員賞  CHAND KILO KHORMA BARAYE MARASSEM-E TADFIN
                              By Saman SALOUR (Iran)
スペシャルメンション  「垂乳女〜TARACHIME〜」 河瀬直美監督
その他
国際批評家連盟賞  DON'T LOOK BACK by KIM Young-Nam (South-Korea)
NETPAC賞  DON'T LOOK BACK by KIM Young-Nam (South-Korea)
*日本からの出品作品はこちらから



屋外上映会場のピアッザ・グランデのスクリーン


椅子も黒・黄で...



...上から見ると豹柄になっています

概観
 新アーティスティック・ディレクター、フレデリック・メール氏の主導の下で開催された第59回ロカルノ映画祭。メール氏は15年ぶりのスイス人ディレクターということもあり好意的に迎えられ、今回の映画祭は特別な期待をもたれていた。往々にしてディレクターが変わることによって映画祭のプログラミングその他に変化が表われるものだが、今回のロカルノの中でまず顕著だったのはセクションの大幅見直しであろう。ともすればコンペティション部門以上に好評だったビデオ部門をコンペ部門に併合、新たにフィルムメーカーズ・オブ・プレゼント部門を第2コンペ化。人権映画の枠を廃止、トーキング・アバウト・シネマ(「映画に関する映画」)部門の復活、旧ビデオ部門とデジタルアートワークを融合させたプレイ・フォワードの新設などである。
 ロカルノ映画祭名物の屋外上映・ピアッザ・グランデ部門もハリウッド映画「マイアミ・バイス」で幕を開けるなど、娯楽作品の多さが目立つようになった。その結果、好天に恵まれたことも幸いして、この部門での集客が大きく伸びたという。従来のロカルノらしい、実験的・芸術的な作品中心の映画祭への回帰を図りつつもより幅広い観客へのアピールも試みようとしている、というのが今年のプログラミングの印象である。
 <デジタル部門>でのチョンジュ映画祭との提携プログラムや、東南アジアをフォーカスした<オープン・ドア>、そして各部門への出品作品などを総合的にみるにロカルノ映画祭内におけるアジア映画の存在感が増したのは喜ばしい変化である。同映画祭のプログラマーの多くが日本及び他のアジア諸国のアニメーションやデジタル作品にたいへん興味をもっているということから、すでに来年以降のさまざまな関連企画案が挙がっていると聞く。
 例年オーガニゼーションに不安を否めなかったロカルノ映画祭であるが、今回の体制変化に伴い、かなり効率的になった。空港からの送迎やIDパスに関してのトラブルもほとんどなく、比較的スムーズであった。が、日本に関しては通訳の調達面で例年通りの混乱が生じたのが残念。ロカルノ市内のホテル数の減少によって、近隣の町への宿泊を余儀なくされたゲストからはやや遠いという意見があったが、他はこれといった不満の声は聞かれなかった。
 新体制への移行も手伝ってか、映画関係者のゲストの顔ぶれが若干変化していた。いわゆる三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)のディレクターが一堂に会した上に、名誉賞Leopard honneurをベネチア映画祭ディレクターが受賞者アレクサンドル・ソクーロフ監督へ贈り、レトロスペクティブ記念プレゼンテーションではカンヌ映画祭ディレクターがアキ・カウリスマキ監督を祝福したのもちょっとした話題であった。


スイス映画
 コンペティション部門でスイスの新人監督・Andrea Skara「DER FRAULEN」が金豹賞を受賞したことにも見られるように,近年のスイス映画の躍進ぶりは注目に値する。今年のロカルノ映画祭では会期中丸1日をスイス映画デーとし、パネルディスカッションや昼時&深夜のパーティ、夜のピアッザ・グランデでの「MON FRERE SE MARRIE」で幕を閉じるまでスイス映画に関連する様々な催しが大々的に繰り広げられた。


OPEN DOOR


会場案内の道標も豹柄です

 諸般の事情から映画製作資金の調達に困難をきたし、かつ国際的に十分なネットワークをもたない諸国・地域の映画製作者への共同制作のパートナーを見つける場を提供することを目的にしたワークショップ、オープン・ドア。今年のコンペティション部門出品作「AQUA」はオープン・ドアで共同制作者を募った作品であるように、3年前に生まれたこのセクションの成果が見え始めてきている。3回目の今年は今後の成長が期待される東南アジア(マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ)を対象地域とし募ったプロジェクトのうち、11の企画が提示され、多くのミーティングがもたれた。特に優秀なプロジェクトにはスイスフィルム、CNCから助成金が支給されるという制度も今回より導入された。またこの地域の作品の紹介の意味もこめて、15作品を上映するなどオープン・ドアの内容もより充実してきている。


アキ・カウリスマキ特集
 毎年充実の特集上映は、今回はフィンランド映画の代名詞的監督、アキ・カウリスマキの大特集が組まれた。カウリスマキの全作品に加えて、「カルト・ブランシュ」として、彼に21本のプログラミングを一任。その多くはカウリスマキ作品の源流を垣間見させてくれる世界各地の映画史上の名作で、見応え十分の作品群であった(「ウンベルトD」、「散りゆく花」、「戦艦ポチョムキン」など:日本映画は「赤ひげ」「東京物語」の2本)。カウリスマキ監督はレトロスペクティブ記念式典やパネルディスカッションにも積極的に参加、ほとんどの作品で主演を務める女優・カティ・オウティネンらゆかりの人々も来場するなど特集を盛り上げた。


日本からの出品作品


「ゲルマニウムの夜」スタッフの皆さんと

 残念ながらメインコンペティションには出品作はなかったが、今年から導入された「フィルムメーカーズ・オブ・プレゼント」コンペティション部門に大森立嗣監督のデビュー作「ゲルマニウムの夜」と、河瀬直美監督の中篇ビデオ作品「垂乳女」が選出された。前者は日本公開時もカトリック修道院を舞台にしたセンセーショナルなストーリー展開とビジュアルの完成度の高さが話題となっていた作品であるが、キリスト教圏ヨーロッパでもやはり賛否は分かれた。が、日本では終始真剣に観賞されがちであったのに対し、上映中に思わぬところで笑いが起こったり、文化の違いを感じさせられる場面もあった。後者は河瀬氏がフランスのTV局アルテの求めに応じて制作したビデオ・ドキュメンタリー。キッズ向けに上映が行われたアニメーション「こまねこ」も、地元の子どもを中心に大人たちにも大好評で迎えられた(*プロデューサー松本紀子氏の「ロカルノへっぽこ日記」参照)。「TOKYO LOOP」と題した‘東京’からイメージされた16のオムニバス・アニメーションは、新設のプレイ・フォワード部門のオープニングを飾った。


Special
今回のロカルノ国際映画祭に作品を出品された方に、
映画祭について振り返っていただきました。

松本紀子プロデューサー(Talking about Cinema出品作品「こま撮り映画・こまねこ」)
『ロカルノへっぽこ日記』はこちらから

      
映画祭情報トップページへ

Home | お問い合わせ| ©Kawakita Memorial Film Institute All Rights Reserved.