タイガーアワード
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Walking on the wild side by Lia Xiao ZI
The Dog Pound by Manuele Nieto Zas
Old Joy by Jelly Reichardt |
NETPAC賞 |
「鼻歌泥棒」廣末哲万監督 |
国際批評家連盟賞
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Madeinusa by Claudia Llosa
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観客賞 |
Eden by Michael Hoffman |
*日本からの出品作品はこちらから
◆概観◆
曇天の続く厳しい1月のロッテルダムで、映画祭は市民にとって心待ちにしている冬の大イヴェントだという。映画祭メイン会場・De Doelenの周りは連日お昼過ぎあたりから活気づき、深夜にいたるまで映画の話に花を咲かせる市民(主に若者)で賑わいを見せる。インターネットを通じてのチケット販売を止め、電話予約とチケット売り場での直接販売のみに切り替えた今回であったが、ほぼ混乱もなく前年と同程度の売り上げがあった。迅速な事務処理、配車から劇場担当者に至るまで、皆親切で効率的なスタッフにはいつもながら安心する。カタログもQ&Aも英語のみ、との割り切りも気持ちが良い。
映画祭公式ウェブサイト(会場内のパソコンからもアクセスできる)では目下の人気作品の順位がポイントとともに表示されていて、チェックしている人の姿がそこかしこに目に入る。皆が楽しんで観客賞選びに参加している様子が見て取れた。結果的にその一位となって観客賞を受賞したのがドイツ映画「EDEN」。7500ユーロを獲得し、クロージング日に追加上映も行われた。オーソドックス、かと思いきや、意外な展開を見せるストーリーに人気が集まったのかと思われる。(ちなみに日本映画で最高位は27位の「妖怪大戦争」)
写真:ロッテルダムの街中に飾られた映画祭ポスター
◆日本からの出品作品◆
オープニング作品に長崎俊一監督の「闇打つ心臓」が選ばれたというニュースは軽い衝撃であった。そして予想に違わず、ヨーロッパでの知名度の高いとはいえない、日本のインディペンデント映画作家である監督の作品をオープニング作品としたことに対しては上映後に賛否両論の意見があった。が、映画祭ディレクター、サンドラ・デン・ハマー氏は意見が分かれることは必至の作品、しかし自信を持っての上映、と公言してやまなかった。(デン・ハマー氏のブログにも自分の子供たちにもこの映画を選んだ理由を丁寧に説明している様子が書かれている)。ロッテルダム映画祭とデン・ハマー氏の気概が感じられた選択だったといえる。また長崎監督の大規模な特集が組まれ、計12本が上映された。この特集を他の映画祭でも、という話も出ているという。その他にも若手監督を中心に今年もヴァラエティに富んだ多数の日本映画、主にエッジの効いたテンポの良い作品がロッテルダムで披露された。
写真:ロッテルダム映画祭ディレクターのサンドラ・デン・ハマー氏(左)
◆CINEMART(企画マーケット)◆
世界の多くで取り入れられるようになった「企画マーケット」のパイオニア的存在のロッテルダム・シネマート。今年で23回目を数えた。23年前頃は、共同制作という形態も一般的とは言いがたい時代、ロッテルダム映画祭の新奇性がうかがえる。以来、進行中の企画の共同出資者を探す場として機能し続けている。毎年予め45前後のプロジェクトが入念な審査を経て選出され、それぞれの関係者は個別に潜在的出資者の人々と効率的にミーティングを持つ。(残念ながら今回は日本からの企画は選ばれていなかった)このシネマートが開催される5日間は映画祭のひとつの山場であるというが、残念ながら私はその時期に映画祭に参加していたことがない・・・。しかし、人脈つくり、出資者探しにおいて非常に有益な場であると製作者たちの評判もきわめて良く、週末だけでも訪れる近隣諸国の映画関係者でたいへんな賑わいだという。また優れた企画にはシネマートのスポンサーより、奨励金が出る。Arte
France Cinema Awards,Prince Claus Fund Film Grant)
今回の映画祭で上映された作品のうち、14本が過去のシネマート企画作品であった。
◆HUBERT BALS FUND◆
ロッテルダム映画祭は映画製作助成に早くから力を注いできた映画祭として定評がある。上記のシネマートの他に、インディペンデントフィルム製作者が同映画祭を世界的にみて非常に重要な存在と位置づけるもうひとつの理由がHUBERT BALS FUNDの存在である。この助成団体はロッテルダム映画祭期間だけに限らず、助成作品の劇場公開やDVDリリースに向けての補助など通年にわたって活動を展開している、懐の広い団体である。
この基金は1988年の創設以来、600以上のプロジェクトに助成を果たしてきた。(中東、東欧、アフリカ、アジア、南米などの資金的に製作が困難な地域の作品が助成先)HUBERT BALS FUNDで資金を得て映画を撮り続けて、映画が完成した暁には、ロッテルダム映画祭が発表の場所になりうる。(しかし必ずしもロッテルダムをプレミアにしなくてはいけない、などと小さいことは言わないあたりはさすが。ちなみに今年度ベルリン映画祭の金熊賞作品「GRAVICA」もこの基金の助成作)
映画祭専用の送迎車
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