2006/1/25-2/5

金熊賞
 Tuya's Marriage by Wang Quan'an
銀熊賞(審査員賞)
 El otro (The Other)  by  Ariel Rotter
銀熊賞 (最優秀女優賞)
 Nina Hoss  ('Yella' 中での演技に対して)
銀熊賞 (最優秀男優賞)  Julio Chavez  ('El otro<The Other>'中での演技に対して)
銀熊賞 (最優秀監督賞)

 Joseph Cedar ('Beaufort'に対して)

アルフレッド・バウアー賞  I am a Cyborg, But That's OK  by Park Chan-wook
最優秀初監督作品賞  Vanaja by Rajnesh Domalpalli
名誉金熊賞  Arther Penn (director, USA)
国際批評家連盟賞  (コンペ部門) Tuya's Marriage by Wang Quan'an
 (パノラマ部門) Getting Home by Zhang Yang
 (フォーラム部門) Chrig by Jan Gassmann & Christian Ziorjen
NETPAC賞

 「無花果の顔」 桃井かおり監督
 Tuli by Auraeus Solito

*日本からの出品作品はこちらから



プレミア上映翌日にコンペ作品を上映するUrania

概観
 映画祭で最もメディアの注目を浴びるコンペティション部門には世界各地より19本が選出された。そのうちフランス映画が4本で、オープニングもクロージングもフランス映画であったのはちょっとした驚きであった。ロバート・デ・ニーロ、クリント・イーストウッド、シャロン・ストーン、マット・デイモン、ジェニファー・ロペス、ケイト・ブランシェット、ジュディ・デンチ、、、、いつも以上にハリウッド及びヨーロッパのスターが続々来場、映画祭らしい華やかさを演出した。19本のうち取り上げられたテーマも多岐にわたり、結果的に中国映画「TUYA’S WEDDING」に最高賞である金熊賞が授与された。が、審査員団(団長:ポール・シュレーダー監督)の票は割れたという。コンペ作品に限っていえば、酷評を受けた作品は少なかったが、突出したものもないという回であったといえるだろう。コンペティション部門に中国映画2本、韓国映画1本が選出されたのをはじめ、アジア映画に光が当てられていた回でもあった。 パノラマ、フォーラムはともにそれぞれの特性が感じられる充実のプログラム。特にドキュメンタリーには秀作がみられた。
 今回、映画祭のセクション構成にいくつかの変化があった。コンペティション、パノラマ両部門がそれぞれ設けていた短編部門が今年から一本化され、日本からは「日本の形〜謝罪〜」がエントリーを果たした。惜しくも受賞は逃したものの、日本人の‘謝罪’のパターンを虚実ないまぜにコミカルに描き大好評を博した。


“welcome”の文字でお出迎え

 ‘改編’が行われたのは今年30回目を迎えた旧キンダー映画部門で、今回から「ジェネレーション」と名称を変更、4歳以上の子供向けの‘Kプラス’と14歳以上向けの‘14プラス’からなる部門へと変身した。さらに食をテーマにした作品を対象に「Eat, Drink, See Movies」というカテゴリーがスローフード協会と共催で新設された。食にも造詣が深い同映画祭のディレクター、ディーター・コスリック氏が「料理と映画は芸術で人々を魅了する点で同じ」として積極的に推進した企画で、映画上映前のディナー付鑑賞も取り入れた(35ユーロ:ちなみにディナーなし、映画のみの場合は7ユーロ)。今回この企画で上映された11作品はすべてが最新作というわけではなかったが、日本作品からは昨年公開の江戸時代の将軍の毒見役が主人公である「武士の一分」と今年公開予定の焼肉映画(?)「プルコギ」が選ばれた。




レトロスペクティブのポスター

 ベルリン映画祭の名物ともいえるレトロスペクティブは、名誉金熊賞(生涯功労賞に相当する)を授与されたアーサー・ペン監督の特集、「シティー・ガール」と銘打った無声映画の女優に焦点を当てた特集、ロバート・キャパなどが立ち上げた写真家集団・マグナムの創設60周年を記念して、マグナム関連の映画特集などが連日市内各地で上映され、ベルリンのクラシック映画ファンを喜ばせた。またフォーラム部門では岡本喜八監督特集として、同監督の代表作9本を上映、同監督の欧州初の特集上映となった。
 
多くの映画祭と同様、ベルリン映画祭もチケットのオンライン販売を導入している。このシステムを利用した人が増えたためか、ネットで予約したチケットを受取る窓口には長蛇の列ができていることもままあった。それに対して従来の並んで取る列は例年に較べ空いていたという。

 ベルリン映画祭も映画祭記念グッズの販売に意欲的になってきた。マグカップ、ペン、チョコレートなどから衣類、帽子・手袋などの防寒グッズまでの品揃えで、年々充実してきている。概して割高感があるが売れ行きは上々、特に紫色のバッグは早々に完売したとのことである。映画祭中心地にあるアルカーデンというショッピングセンター内の売り場はグッズを求める人で終始賑わいをみせていた。


グッズ売り場の前の巨大クマ看板(左)と
早々に完売したバッグ(上)

 第5回目を数えたタレントキャンパスも映画祭の中での位置を確立している。従来の‘キャンパス’であるハウス・オブ・ワールドカルチャーが今回は改築中のため、他の2会場に分かれての開催となった。それにしても付随イヴェントなどの増加に伴って、映画祭が使用する施設が市内に広く点在するようになり、それぞれの参加者が自分の持ち場以外に足を伸ばすのが困難になっている・・。



ユニジャパンのブース

ヨーロピアン・フィルム・マーケット
 
マーティン・グロピウス・バウをメイン会場とし、ポツダム通りの映画祭事務局のあるビルの5F、そして付近のホテルの部屋といったように大きく分けて3箇所で展開されていた。総じて売買は順調に行われ、成果の大きさを語る業者が多かった。連日、セールスの成果が「VARIETY」や「SCREEN」の紙面の多くを占め、日によっては映画祭そのものよりも注目を浴びていたかもしれない。映画祭メイン会場付近からのアクセスはシャトル・カーのおかげで相変わらず抜群なのだが、それでもマーケット関係の参加者が映画祭地区に足を運ぶことが減ってきているのが(そんな余裕はないのだろうが・・)少々残念である。


日本からの出品作品
 コンペティション部門以外には満遍なく選出された。
まず目を引いたのが桃井かおり氏の活躍である。初の監督作品「無花果の顔」がフォーラム部門に出品され、ジャーナリストや現地の観客の反応も上々。またパノラマ・スペシャルのオープニング作品「武士の一分」にも味のある役どころで出演、同作の公式上映時には檀れい氏と共に和服で登場し、ウィットに富んだ受け答えで場を盛り上げた。日程の都合上立ち会えなかったが「プルコギ」にも出演しており、今回のベルリン映画祭の中の三作品に関わっていたことになる。


多くの報道陣からの取材を受ける
蜷川実花監督と土屋アンナ氏

 日本からの出品作品の中で最も外国のメディアが取り上げたのはニューヨーク在住のドキュメンタリー作家、想田和弘監督が日本の選挙運動をリアルに描写した「選挙」であった。同作の主人公、川崎市議・山内和彦氏が日本風の選挙運動をベルリナーレ・パラスト付近でパフォーマンスとして行うなどの話題も提供した。フォーラム部門では奥監督の意欲作、「カインの末裔」も上映された。賛否が分かれる作品なだけに、上映後の質疑応答も白熱、1時間に及ぶ手応えのあるやりとりとなった回もあった。ベルリナーレ・スペシャルの「さくらん」上映にあたっては、監督・蜷川実花氏と主演土屋アンナ氏が共にあでやかな着物姿でお披露目会場となった旧東ベルリンの由緒ある映画館、インターナショナル前に敷かれたレッド・カーペットを彩った。また、アメリカ映画ながら主要キャストは日本人で全編にわたってほとんど日本語で展開される、「硫黄島からの手紙」がアウト・オブ・コンペ部門に出品され、クリント・イーストウッド監督とともに3人の日本人俳優も登場、喝采を浴びた。


Special
今回のベルリン映画祭に出席された日本人の方々の中から、
映画祭について振り返っていただきました。

想田和弘監督(フォーラム部門出品作品「選挙」) 
『映画「選挙」の誕生』はこちらから



      
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