長編劇映画部門 |
金豹賞
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「愛の予感」 小林政広監督
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審査員特別賞 |
MEMORIES (韓国)
by Pedro Costa, Harman Farockis, Eugene Green |
最優秀監督賞 |
CAPITAINE ACHAB (フランス・スウェーデン)
by Philippe Ramos
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主演女優賞 |
Marian Alvares in LO MEJOR DE MI (スペイン) |
主演男優賞 |
Michel Piccoli in SOUS LES TOITS DE PARIS (フランス)
Michele Venitucci in FUORI DALLE CORDE(スイス・イタリア) |
UBS観客賞 |
DEATH AT A FUNERAL (USA) by Frank OZ |
ダニエル・シュミット賞 |
「愛の予感」 小林政広監督 |
国際批評家連盟賞 |
CAPITAINE ACHAB |
NETPAC賞 |
LITTLE MOTH (中国) by Tao Peng
AN SHE<THOSE THREE (イラン) by Naghi
Nermati |
Le Leopard d’honneur
名誉賞 |
Hou Hsiao-Hsien(監督・台湾) |
Excellence Award |
Michel Piccoli(俳優・フランス)、Carmen Maura(俳優・スペイン) |
*日本からの出品作品はこちらから
街中に飾られた映画祭の過去のポスター
観客賞の投票箱 |
◆概観◆
60周年を迎えたロカルノ映画祭。大々的な記念行事こそなかったものの、特別部門「RETOUR A LOCARNO」が設けられ、過去にロカルノを訪れた監督たちが再訪して当時の思い出を語ったり、街には過去のポスターが展示されたりといったささやかな催しの中にさらなる発展を祈念している様子がうかがえた。
映画祭全体をみるに明らかに規模が拡大している。良質・斬新なインディペンデント映画を求めてやってくるバイヤー・ジャーナリストも近隣ヨーロッパ諸国を中心に確実に増加(業界からの参加者は昨年の4221人に対し、今年は4889人)。そうは言っても快適な気候とリラックスした雰囲気の中、参加者の表情は明るく、スクリーニングやミーティングに追われる映画祭でのよくある慌ただしい光景を目にすることはない。昨年からロカルノ市内のいくつかのホテルがクローズし、供給不足になったことから隣接するアスコナ市に宿泊するゲスト数もぐんと増えた。アスコナ市にも映画祭の広告があちこちで見受けられ、アスコナ市とピアッツア・グランデをつなぐシャトルバスを定期運行するなど関係を強化している。毎年のことながらピアッツァ・グランデでの野外上映は夏の夜の祝祭感いっぱいで人気を博し、連日ほぼ満席になった。21時半からスタートするため、2本上映する日は2本目がほぼ真夜中の開始となる。途中から雨が降り出した場合にはコンペ作品上映会場でもあるFEVIで上映されるが、ピアッツアでもとにかく最後まで上映し続ける。大雨の中でも極力雨のかからない場所を選んで観続ける観客がいるのには驚いた。
送迎のバスやホテルの手配など、ロカルノの懸案であったオーガニゼーションも昨年以来、かなり改善されているのはフレデリック・メール氏以下執行部の気合いだろうか。参加者のストレスは軽減されている。
ロカルノ映画祭アーティスティック・ディレクターの
フレデリック・メール氏と「愛の予感」主演の渡辺真起子さん |
◆日本からの出品作品◆
今年はコンペティション部門に小林政広監督の「愛の予感」が選出され、最高賞である金豹賞を獲得した。日本人監督としては実相時昭雄監督の「無常」以来の快挙。登場人物はほぼふたりだけ、会話も冒頭と終わり間際のみのミニマルなつくりで、北海道の荒涼とした情景が主人公ふたりの心象風景と重なる。決して大衆受けする作品ではないが、ロカルノの観客にはまっすぐに届いていたようだ。そして審査員団も同じ判断を下した。小林監督のロカルノ・コンペ出品及びロカルノ行きは2003年の「女理髪師の恋」に続いて2度目であったが、小林監督自身、観客の反応の前回との違いをつぶさに感じていたそうだ。公式上映と最終日の受賞式には、小林監督とともに主演を務めた渡辺真起子氏も来場し、華を添えた。
ピアッツア・グランデ部門のオープニング上映作品は曽利文彦監督の「ベクシル2007 日本鎖国」。最も祝祭感溢れる同部門ということで注目度も抜群、曽利監督も来訪し盛り上がりをみせた。
また昨年新設されたプレイフォワード部門にはイメージフォーラムの短編作品集(10作品)が登場した。実験的アニメーションに多大な関心を示すロカルノ映画祭からの要望を受けてイメージ・フォーラムがプログラム、観客の好評を博した。
オープン・ドアの作品が上映されるRIALTO |
◆オープン・ドア◆
呼称や内容はさまざまであるが、映画製作を何らかの形で支援する映画祭が増えてきている(ロッテルダム、ベルリン、カンヌ、釜山など)。ロカルノにおいてはオープン・ドアがそれに相当する。昨年から本格始動したこの試みは、諸条件から映画製作が困難であるとされる地域をフォーカスし、共同製作者やファンドを探すためのワークショップに参加できるプロジェクトを選考し、その中の優れた2プロジェクトにはそれぞれ5万スイスフランの支援金が授与される。またこの地域の特色が表れている作品を一般の観客に向けて上映する。今回の対象地域は中近東(シリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル、イラク、パレスチナ自治区、エジプト)。政治的・宗教的に複雑な背景を抱えている地域なだけに、会場で上映された作品はきわめて硬派なものがほとんどであった。今回はカンヌ映画祭・シネフォンダシオンとブエノスアイレス映画祭の中の製作支援プロジェクト、ブエノスアイレス・ラボとも協力体制を敷いた。ベルリン映画祭のタレント・キャンパスはサラエボ映画祭と提携を開始しているなど、製作・人材育成に関して各映画祭間でのコラボレーションも進んできている。アジア地域においても始まってゆくのだろうか。
今回のロカルノ映画祭に出席された日本人の方々の中から、
映画祭について振り返っていただきました。
小林政広監督
(コンペティション部門出品作品「愛の予感」 *金豹賞受賞)
『小林政広監督・ロカルノレポート』はこちらから
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