パルムドール
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Entre les murs (The Class) by Laurent Cantet
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グランプリ
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Gomorrah by Matteo Garrone |
審査員賞 |
IL Divo by Paolo Sorrentino |
最優秀監督賞 |
Nuri
Bilge Ceylan ("Three
Monkeys" のディレクションに対して) |
最優秀女優賞 |
Sandra Corvelon ("Linha De Passe"中での演技に対して) |
最優秀男優賞 |
Benicio del Toro ("Che"中での演技に対して) |
最優秀脚本賞 |
Jean-Pierre &Luc Dardenne ("Le Silence de Lorna") |
特別賞 |
Catherine Deneuve (Un Conte de Noel <A Christmas Tale> )
Clint Eastwood ( L'Exchange <Changeling> ) |
カメラ・ドール
(新人監督賞) |
Hunger by Steve
McQueen |
ある視点部門 審査員賞 |
「トウキョウソナタ」 黒沢清監督 |
*日本からの出品作品はこちらから
カンヌ駅に飾られている
リュミエール兄弟の写真 |
◆概観◆
60回という節目の年で何かと華やかな催し・話題の多かった昨年に較べ、例年にない悪天候に見舞われたのも重なって、一見するとかなり地味な印象の今回であったが、落ち着きを取り戻したという言い方の方が適切なように思える。飛びぬけた話題作に乏しかったのも事実であるが(ラインナップ発表が延期されたのもそのせいかもしれない)、カンヌ映画祭の面目を十分に保つ秀作と呼ぶにふさわしい骨太な作品は多数見受けられた。全体としてはヨーロッパ映画と南米勢の健闘ぶりが目立ち、アジア映画の存在感が希薄であったといえる。コンペティション部門に常連監督ではない比較的若手の監督の作品が複数登場したのは新鮮であった。彼らの作品の評価は必ずしも高くはなかったが、歓迎すべき動きであるといってよい。
ショーン・ペン監督率いる審査員団の下した審査結果には驚きの声も少なくはなかった。全員一致だったという最高賞パルム・ドールは地元フランスの『クラス』。コンペ作品上映最後の土曜日午後の上映で、注目度が高かったとは言い難い同作であったが、独創性と普遍性を併せ持ち、公式上映でのスタンディングオベーションは10分以上なりやまないほどであった。カンヌでの存在感が薄れて久しかったイタリア映画が2本、主要な賞を獲得したのもニュースであった。関係者の話によると今回の審査員団はたいへん友好的な雰囲気の中、極めて情熱をもって審査に取り組んでいたという。
フランス全土を席巻した反体制運動‘五月革命’の起こった68年から今年で40年。この‘革命’の影響でカンヌ映画祭は中止に追い込まれ、監督週間部門創設の契機となった。今年の監督週間部門では40周年を記念して同部門の元・ディレクター、オリヴィエ・ジャアン監督が監督週間の40年を題に取り製作した『40×15』に加え、同部門にゆかりの深い監督たちのビデオメッセージを上映した。
『インディ・ジョーンズ4』の公式上映チケットを
手に入れようと頑張っています |
すっかり恒例となった感のあるハリウッド大作のプレミア上映は今年は 『インディ・ジョーンズ4』と『カンフー・パンダ』。お祭りとしての華やぎをもたせるためにも悪いことではないと思うが、個人的にはこの手の作品の上映は2本までに抑えてもらいたい気がする。
珍しく‘すいている’と思えた回でもあった。公式上映会場ルミエールでの公式上映時もよほどの話題作以外は超満席というわけでもなく、会場への入場も驚くほどスムーズで拍子抜けするほど(ありがたいことだが)。特に映画祭に併設されているマーケット会場は初日からすいており、例年の熱気を感じられなかった。ユーロ高によるアメリカからの業者の参加数激減、新作及び企画段階の作品の売買契約締結の形態の変化などが理由として語られていたが、この傾向は一時的なものなのか、拍車がかかるのか来年以降の動向にも注目したい。
◆日本映画◆
日本からの出品作品がこれほど少ない年は近年珍しい。唯一選ばれたのは‘ある視点’部門出品の黒沢清監督の『トウキョウソナタ』。ホラー映画の名手として知られていた黒沢監督であるが、今作ではリストラされた東京のサラリーマンを主人公にそれぞれ問題を抱える家族ひとりひとりを描き、新境地を切り拓いたといえる。コンペティション部門に選出されなかったことに疑問を唱える声があちこちで聞かれたほど好評で、黒沢監督も大いに手ごたえを感じたと語っていた。
またある視点部門に出品された30分の短編三作品からなる『TOKYO!』は日本・フランス・韓国の合作。監督は皆外国人(韓国のポン・ジュノ監督、フランスのミシェル・ゴンドリー監督、レオス・カラックス監督)、キャストは日本人俳優がつとめた意欲作。合作というスタイルが増加の一途を辿り、映画の国籍を問うのがどんどん難しくなっている現在を象徴する形態の作品であった。
メイン会場パレの前に集まる多くの人々 |
◆川喜多かしこ生誕100年記念上映◆
川喜多かしこ生誕100周年を記念して鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』が‘カンヌ・クラシックス部門’の一本として映画祭メイン会場パレ内のサラ・ブニュエルにて上映された。川喜多記念映画文化財団は2008年から2009年にかけて川喜多賞受賞者8人の監督作品各3本ずつ、計24本の各国のフィルムアーカイヴや映画祭等での巡回上映を企画しており、このカンヌでの上映がそのスタートとの位置付けであった。上映に先立って来場者の方々に巡回上映用に作成された英文パンフレットが配布され、かしこ夫人と親交の深かったウルリッヒ・グレゴール氏(キノ・アーゼナル責任者・前ベルリン映画祭フォーラム部門ディレクター)より夫人の映画にかける情熱やその人となりがよく伝わってくるエピソードが語られた。華麗で強烈な印象を残す映像はニュープリントということでより鮮明な輝きを放っており、また突飛ともいえるストーリー展開は製作から30年近くの時を経ていることを感じさせないほどの‘新しさ’であった(「これは最近製作された作品です」と言っても通用しますね、と冗談混じりに言ってくる人もいた)。長尺でやや難解であることから途中席を立つ人の姿もみられたが、日本の力のあるクラシック映画の普遍的魅力を堪能してもらえたのではと思われる。
カンヌクラシックス部門では他に故・デビッド・リーン監督生誕100周年記念上映、また現在最高齢の現役映画監督マノエル・ド・オリベイラ監督の100歳を記念しての名誉パルムドール受賞式も執り行われた。
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