2007/5/16-27

金熊賞
 La Teta asustada (The Milk of Sorrow) / Spain, Peru 
                                 by Claudia Llosa
銀熊賞
 審査員賞
 
 Alle Anderen (Everyone else) /Germany by Maren Ade
  Gigante / Uruguay, Germany, Argentina by Adrian Biniez

 最優秀監督賞
  
Asghar Farhadi 'About Elly'/ Iranのディレクションに対して)

 最優秀女優賞
  
Birgit Minichmayr ('Alle Anderen'中での演技に対して)

 最優秀男優賞
  Sotigui Kouyate
     
('London River'/ UK, France, Argeria中での演技に対して)
アルフレッド・バウアー賞  Gigante / Uruguay, Germany, Argentina by Adrian Biniez
 Tatarak (Sweet Rush) / Poland   by Andrzej Wajda
最優秀初監督作品  Gigante   by Adrian Biniez
名誉金熊賞  Maurice Jarre (composer, France)
Berlinale Camera  Claude Chabrol, Gunter Rohrbach, Manoel Oliveira
国際批評家連盟賞/
カリガリ賞
 「愛のむきだし」 園子温監督
*日本からの出品作品はこちらから


概観


新会場のFriedrich-stadtpalast

 1月は稀にみる寒さだったというベルリンであるが、映画祭が始まる頃には通常レベルの寒さに戻り、客足が遠のくのを危惧していた映画祭事務局は安堵したと聞く。地元ドイツのトム・ティクヴァ監督の『インターナショナル』で幕を開けた。今回は上映会場としてロケーションも外観も素晴らしいFriedrich-stadtpalastそしてCinema Paris二館を加え、それに伴い上映回数も増加したこともあり、総観客数は過去最高の延べ270.000人(昨年は約240.000人)を記録した。
 世界規模での大不況はベルリン映画祭にとってもかなりの打撃のようで、最初の週末を除きマーケット会場に出入りする人の少なさが日々嘆かれていた。ベルリン行きを取り止めこそしなかったものの、参加人数を大幅に減らした会社も多数あり、特にアジアの国々からの参加者も大きく減っていた様子。ベルリン不参加を決めたアジアの国々の業者の中には、欧米からの来訪者が増加しているHAF(香港・アジアファイナンシャル・フォーラム)が3月に香港で開催されるため、そちらに軸足を移した会社も少なくないようである。
 ここしばらく毎年物議を醸し出しているコンペティション部門の作品の弱さであるが、今年も残念ながらその芳しくはない評判を覆すには至らなかった。そろそろ本気で選考の仕方を再検討する必要があるのではないだろうかと思えてきたりもする。他部門はそれぞれの特色を生かした、総じてバランスの良いプログラミングであるが。もちろんそうは言ってもコンペティション部門にも小粒ながら力作はいくつか見受けられた。レッド・カーペットは例年通り数々のスターが彩りを添え、お祭り気分を盛り上げたものの、社会的・政治的テーマを繊細に、間接的に描いた作品が高評価を受けたのもここ数年と同様の結果である。
 金熊賞、審査員賞とアルフレッド・バウアー賞を占めたことからも見受けられるが、南米発の作品に業界の関心が高まっていると言ってよい。
 多くの映画祭で取り入れられるようになった、「映画祭グッズ」販売もベルリンはかなり力を入れている。赤を基調とした明るいパターンは比較的万人向けなせいか、お土産に適した商品も多いと思われ、早々に売り切れるアイテムも続出。お店を覗くのが毎年ちょっとした楽しみになっている。
 来年の60回に向けての準備がすでに始動しているというベルリン映画祭、その動向を注目していたい。


日本映画
 コンペティション部門に日本映画は入らず(*アジアからはチェン・カイコー監督による中国映画『花の生涯〜梅蘭芳』のみ)、全部門を通しても日本映画の数は例年より少なかったこともあり、日本国内でのベルリン映画祭に関係するマスコミの報道は、昨年に較べかなり抑えられていた。
 パノラマ部門に日本から唯一選出された『ぐるりのこと。』は完成度も日本国内での評価も高い作品で、橋口亮輔監督のベルリン行きが急遽キャンセルになったのは非常に残念。フォーラム部門には個性溢れる日本映画が顔を揃えた。中でも四時間近くの長尺で、内容もインパクトの強い園子温監督の『愛のむきだし』は毎回満員、口コミで評判が広がり、大きな話題をふりまいた。一昨年の『選挙』に続いて二回目のベルリン出品作となった想田和弘監督のドキュメンタリー『精神』は精神を病む人々に真摯に向き合った意欲作で、こちらも毎回白熱した質疑応答が繰り広げられた。『谷中暮色』を携えてベルリン入りした船橋淳監督もフォーラム部門二度目の出品。フォーラム部門には‘卒業生’の監督の作品を継続的に注目、成長を見守っているかのような感が漂っている。(ちなみに園子温監督作品のフォーラム部門への選出は四度目)


マーケット
 
経済不況の影響が最も顕著に響いてくるのがマーケットである。印象としてはかなりダメージを受けているように見受けられたが、主催者側の発表によるとそれなりの数の商談が成立し、参加者の満足度もまずますだったとのことではある。主催者側は諸条件を勘案して今回はもともとそれほどの盛り上がりは期待できないと予測していたのかもしれない。メイン会場のマーティン・グロピウス・バウのスペース不足問題を解消すべく、今年は第二会場としてマリオット・ホテルの数フロアを使用。この両会場はもちろん徒歩圏内な上にシャトルバスも運行しており、さほど不自由はない。ただ個室を拠点としていた会社はやや不便を感じていたようではあるが。
 日本映画の情報拠点であるユニ・ジャパンブースは今年もメイン会場内に位置し(ブースの場所は二階に移動)、日本映画の情報を求めて訪れる人々への対応、各プロダクションの共同ブースとしての役割も果たしていた。同ブースで二回催された交流会も日本の関係者と日本映画に関心を持つ人たちで大盛況、交流の場を持つことの重要性を感じた。映画祭に参加していても各自の時間を調整するのはなかなか難しく、関係者に一度に会える機会があるのはたいへんありがたい。

 
メイン会場近くに飾られた、映画祭と上映作品のポスター
手前の円柱型広告はグルグル回り、後方に並んだパネルも数秒毎にポスターが一斉にスライドします






      
映画祭情報トップページへ

Home | お問い合わせ| ©Kawakita Memorial Film Institute All Rights Reserved.