*日本からの出品作品はこちらから
◆概観◆
アジア映画プロモーションの一大拠点としての地位を確立しきった感がある。ここ数年、韓国映画が絶好調であることや、国を挙げての精力的な映画振興策も功を奏しているなど好条件が後押しをしてくれてもいる。第8回目の今回は、従来のNampo-dong地区の映画館も使用してはいるものの、映画祭の機能は実質上、Heundeane地区に移転した。(Nampo-dong〜Heundeane間はかなり距離があり、気軽に移動はできない・・・)
映画祭のメイン会場となったのはPPP開催場所でもあったパラダイスホテルと、10のスクリーニング会場の入ったMEGABOXというシネマコンプレックスであった。後者はこの地区の繁華街のショッピングモール8Fに位置し、6Fには暫定的な映画祭事務局、5Fには映画祭ゲストのみ利用可能なビデオルームが入っていた。シネコンの音響や椅子などはレベルが高い。ただこの建物はなんといっても大ショッピングモールで多種多様なお店がひしめいており、雰囲気という点では疑問が残る。(あくまでも個人的な感想だが)またひとつひとつの会場の収容人数が少ないため、観たい映画のチケットを確保するのが少々困難だった。
(写真上:メイン会場のひとつ、MEGA BOX 写真下:MEGA BOXの中の様子)
45本の韓国映画、他に14のアジア各国から選りすぐられた98作品が上映されるとあって、この一年内に制作されたアジア映画を一括してみる場として捉えている欧米人ゲストも数多い。とはいえチケット確保が至難ということでビデオルームが大賑わいであったが、ものによってはクオリティの良くないビデオもあり、満足な解決策とは言い難かった。
今回から顕著な功績を残してきたアジア人映画監督を表彰するという趣旨の「アジアン・フィルムメーカー賞」を設け、第1回目の受賞者としてモフセン・マフマルバフ氏が選ばれた。小規模ながらも北朝鮮映画の上映も敢行するなど、とにかく常に前向きな姿勢が感じられる映画祭である。
(写真左:アジアン・フィルムメーカー授賞式の模様)
また今年も多数の誠実なボランティアスタッフの活躍が目立った。
皆、熱心に楽しそうに働いている。トラブル発生時に責任の所在を求める場合などは不都合が生じることもあるが、とにかくこの若い活力は貴重だ。
◆PPP:プサン・プロモーション・プラン◆
PPPも第6回目を迎えた。アジア各地で企画される映画のうち有望なプロジェクトを選定、各国の投資家と結びつける場として、成果を挙げ続け、釜山映画祭の目玉(といっては語弊があるだろうか)になっている。今年もパラダイス・ホテルの2Fを会場に、様々なミーティングが行われていた。さらに今年はアジア映画を専門としたフィルムマーケットがスタートした。韓国から10社、日本、香港、台湾、シンガポール等から15社ほどが参加した。日本からも多数の映画関係者同映画祭へ足を運んでいた中で、PPPの時期に合わせて主2〜3日滞在というパターンが多くみられた。行き来が楽なのはやはり大きなメリットである。10周年となる再来年2005年には今年から始まったマーケットをさらに本格化させる計画を進めている最中と聞く。さらなる躍進を期待したい。
◆日本映画◆
例年同様に、多くの日本映画が出品され、また多くの関係者が映画祭を訪れた。オープニング作品「ドッペルゲンガー」の上映に際しては監督の黒沢清氏、主演俳優の役所広司氏が参加。韓国でも知名度の高いふたりなだけに、大いに盛り上がりを見せた。
映画祭の会期が昨年、一昨年の11月から10月に戻ったのを受けて、野外上映が復活した。会期を通じて好天に恵まれ、「座頭市」、「ゲロッパ!」といった日本作品の野外上映も成功裡に終わった。しかし日本映画のみに限った話ではないのだと思うが、映画祭事務局と連絡がかみ合わず、舞台挨拶や上映開始時間等々の変更を余儀なくされたりといった映画祭側の不手際を指摘する声がいくつか聞かれた。次年度以降の改善を望みたい。