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金獅子賞
“VERA DRAKE” by Mike Leigh |
銀獅子賞(審査員特別賞)
“MAR ADENTRO” by Alejandro Amenabar
銀獅子賞(監督賞)
“BIN JIP (空家)” by Kim Ki-duk |
OSSELA (技術貢献賞)
スタジオジブリ (「ハウルの動く城」の製作に対し)
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最優秀女優賞
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Imelda Staunton
(in “VERA DRAKE” by Mike Leigh) |
最優秀男優賞
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Javier Bardem
(in “MAR ADENTRO” by Alejandro Amenabar)
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VENEZIA ORIZZONTI賞
(ORIZZONTI部門最優秀作品賞)
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“LES PETIT FILS”
by Ilan Duran Cohen |
VENEZIA CINEMA
DEGITAL賞
(CINEMA DEGITAL部門最優秀作品賞)
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“20 Angosht” by Mania
Akbari |
最優秀第一作監督作品賞
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“LE GRAND VOYAGE”
by Ismal Ferroukhi |
国際批評家連盟賞
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【competitive section】
“BIN JIP (空家)” by Kim Ki-duk
【parallel sections】
“Land Wind (Vento di terra)” by Vincenzo Marra
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*日本からの出品作品はこちらから
◆概観◆
マルコ・ミュラー氏をディレクターに迎えて初めての映画祭ということで、注目の集まった第61回ヴェネチア映画祭。外観的な変化にもまず表れていた。有名建築家の手によるものだというメイン会場Palazzo
del Cinema前のライオンに一瞬絶句した。昼間見るとちょっとどうだろうと思うが、夜ライトアップされた際は幻想的でお洒落、さすがだなと思わせられる。また日が落ちてからのPalazzo
del Casinoの美しさには息を呑んだ。イタリア名画の有名シーンが音声・音楽付きで映写機で投影されるのだ。その優雅な様子をデジカメに捉えている人の姿が後を絶たなかった。
(写真右:映画祭メイン会場)
例年ハリウッドスターの来訪が話題を呼ぶヴェネチア映画祭であるが、今年は特に華やかな顔ぶれであった。スピルバーグ監督、トム・クルーズ、トム・ハンクス、二コール・キッドマン、ジョニー・デップ。。。
昨年までとの大きな相違点として、セクションの大幅な改革も進んだ。まず数年続いたコンペティション部門二分化を廃止、[VENEZIA
61]ということで一本化した。その代わりにパラレル部門それぞれの最優秀作と思われる作品に賞を授与、新たに独立部門として新設されたデジタルシネマ部門もコンペティションの形を取った。そして着目するのはGIORNATE
DEGLI AUTORI (Venice Days)と銘打ったサイドバー部門。カンヌ映画祭の監督週間をモデルにしたというが、監督週間の場合、68年に本部門に反旗を翻す形で誕生したのに対し、こちらの開設はミュラー氏の発案によるものであり、創設の経緯は大きく異なっている。ただ初年度の今年は準備期間不足も手伝ったのか、会場が異なるでもなく、特色を出すには至らなかったように思われる。
(写真左:チケットを買い求めるために列をなす人々)
映画祭事務局のオーガニゼーションは、残念ながら混乱ぶりが目についた。特に上映開始時間の遅れは深刻だった。一時間遅れがまったく珍しくない。もともとのスクリーニング時間の設定にも無理がある上に、入場させる際のセキュリティチェックに予想以上に時間が取られてしまっていたようだ。またの機械ミスから大量のオーヴァーブッキングが発生、チケットを持っていても会場に入りきれなかった人々から不満の嵐が起こった。どうにかならないものだろうか・・・。
◆Venice
Screening◆
映画プロデューサーの肩書きも持つミュラー氏(現在はディレクター職に専念中)は就任当初からマーケットの重要性を力説、Industry部門を2種類に分けるなどして一昨年から行われていたマーケット機能の充実化に力を入れた。マーケットスクリーニング数も着実に増えている。今年は少なくとも日本のバイヤーに関して言えば、例年に比してかなり多くの参加がみられた。ヴェネチアの作品は難解で商業的成功が難しいというイメージが払拭されつつあるのだろうか。また少し遅れてスタートするトロント映画祭とセットで考えているバイヤーも多いことから、ヴェネチアで作品を観てトロントで商談に入るというパターンも顕在化しているという。
◆出品作品◆
世界中から選りすぐりの作品を一気に集めた感が強い。ミュラー氏が3月の就任後、短期間で全力で作品選定に奔走した結果の表れと評価したい。映画祭の看板であるコンペティション部門にはいわゆる巨匠クラスの作品が結集、金獅子賞に輝いたのはイギリスのマイク・リー監督による「Vera
Drake」。地味ながらも重厚、緻密に計算された演出と出演者それぞれの演技が光った。作品のテーマである人工妊娠中絶に対し、「必要悪」との自説を作品中に主張しつつも、是非は観る者に任せる余白を持たせるあたりはさすがである。銀獅子賞審査員賞を授与された「The
Sea inside」も安楽死問題を扱った社会派作品。主要な賞を獲得したのは問題意識の高い、硬派な作品ではあったが、コンペティション部門内だけを取ってみてもヴァラエティに富んだセレクションであった。他部門においても同様で、特にデジタル部門・オリゾンティ部門では積極的に実験的な作品も選出、イタリアB級映画の特集までしてしまうあたりも絶妙なバランス感覚といえるだろう。
◆日本の存在感◆
本部門に8本、国際批評家週間部門に1本、計9本もの日本映画が選出された特筆すべき年であった(例年は3-4本)。この機会に際し、初めて日本映画のためのパーティが文化庁主催のもとPalazzo
del Casino内の大レストランで行われた。ローマから駐イタリア日本大使が駆けつけ、映画祭ディレクター・マルコ・ミュラー氏も出席し祝辞を述べるなど公式な趣きをたたえつつも、和やかな雰囲気の中つつがなく執り行われた。出席者は日本人参加者他、イタリア人を中心にヴェネチア映画祭関係者及び審査員まで幅広い層が集まっていた。日本のパーティであるせいか、予想以上に「時間厳守」のゲストが多かった。
(写真右:映画祭ディレクターのマルコ・ミュラー氏。文化庁主催のパーティにて)
宮崎駿監督の「ハウルの動く城」の評判は極めて高く、世界的な知名度・注目度の高さを再認識した。監督も(声の)出演者も出席がなかったのが残念。9本の出品作それぞれ作風が異なり、日本映画の多彩さをアピールする良い機会になったように思われる。 来年は旧作で日本映画特集を組むことも計画されているという。さらなる展開が楽しみである。