■日本からの出品作品■
黒沢清監督特集
|
「CURE キュア」(1998)
「カリスマ」(1999)
「回路」(2000)
「アカルイミライ」(2003)
「LOFT ロフト」(2006)
「トウキョウソナタ」(2008)
|
スターを見ようとレッド・カーペットの周りに
集う人たち |
◆概観◆
マラケシュ映画祭はモロッコ第二の都市・マラケシュにて毎年12月に開催されており、今回で10回目を迎えた。マラケシュ市民に映画文化に親しむ機会を提供することを目的にモロッコ国王の提唱により発足され、国王の弟Moulay Rachid王子が総裁を務めている。王室が大バックアップしている映画祭だけあって、とにかくすべてが華やかな催しである。マーケットが存在し、商業活動の場としても機能している点をアピールする映画祭も多い昨今、あくまでも映画祭を文化的事業として成立させている映画祭は新鮮に感じられる。外国人ゲストへの手厚いもてなしも特筆すべきものがある。ほぼ毎夜何かしら行われていたレッド・カーペットのイベント時には、スターをひと目見ようと市民が会場付近を囲んだ。ベールを被った女性の姿も少なくはなかった(が、女性がひとりで来ている例はほとんど見られなかった)。
旧宗主国フランスとは現在もいろいろな意味でつながりが強く、またフランス語がかなりの場所で通用するだけに、モロッコにおけるフランス映画の存在は非常に大きいという。同映画祭も現在はフランスの映画・広告会社Public Serviceが請け負い、運営している。映画祭カタログ、及び公式上映時の字幕はフランス語とアラブ語、そして英語が入る。
華やかなクロージングセレモニーの模様 |
毎年ひとつの国を選出し、特集上映を行っているマラケシュ映画祭。10周年の今回はつながりの強固なフランスを大フィーチャーした。フランスで過去30年間に製作された約80の名作が出品され、オープニングセレモニーにはカトリーヌ・ドヌーヴ、ソフィー・マルソー等、錚々たるゲストがフランスから大挙して押し寄せた。またスーザン・サランドン、キアヌ・リーブスらハリウッドからのゲストも訪れ、審査員団は委員長の俳優ジョン・マルコヴィッチを筆頭にガエル=ガルシア・ベルナル、エヴァ・メンデス、マギー・チャンなどこれまた華々しい面々。15作品からなるコンペティション部門は厳密に‘デビュー何作目まで’といった基準があるわけではないが、概して新進監督のインディペンデント色の強い作品で構成されていた。残念ながら日本からの出品作は今年はなし(前回は板尾創二監督デビュー作『脱獄王』が入っていた)。
ジャマ・エル・フナ広場
奥に見えるのが野外上映用の大スクリーン |
マラケシュ市のシンボル、ジャマ・エル・フナ広場には野外上映用の大スクリーンが設置され、映画祭期間中は毎日18時から市民に向けて無料上映が行われた。少々懐かしい感じのある80年代〜90年代のアメリカ映画が中心で、上映時はただでさえ混みあう同広場がより大混雑し、独特の熱気に満ちていた。ジャマ・エル・フナ広場以外の上映会場は見本市や国際会議が開かれる「パレ・デ・コングレ」をメイン会場として、それ以外に二映画館。市民に向けては小型のシャトルバスが運行されていた。われわれ外国人ゲストはホテルから映画祭のオフィシャルカーで各所へ連れて行ってもらうのが常で、行動はほとんど車。車の台数もそれなりに多かったのでそれほど待たされることもなく、それはそれでもちろん悪くはなかったのだが、自由に行き来がしづらいのが少々難であった。パレ・デ・コングレにおいては記者会見や各種のセレモニー、特別講義等が催された。なかでも特筆すべきはダルデンヌ兄弟、イ・チャンドン監督、フランシス・コッポラ監督という実績と知名度を兼ね備えた3組の監督による「マスタークラス」。聴き応えのある内容で聴衆を魅了した。また昨年に引き続き視覚障害のある人々を対象にした7作品の上映及びシンポジウムも行われた。
受賞式でスピーチを行なう黒沢清監督 |
◆黒沢清監督特集◆
黒沢清監督にこれまでの功績に対し名誉賞が贈呈された。日本人監督としては青山真治監督以来二人目の栄誉。受賞を記念して黒沢監督の6作品が特集上映として上映された。受賞式には監督が自ら出席し、スタンディング・オベーションを受ける中、黒沢監督作品のファンだというフランス人女優、イレーヌ・ジャコブより記念トロフィーを授与された。フランスで人気の高い黒沢監督だけあってフランス、地元モロッコをはじめ各国のメディアの取材が殺到。映画祭に参加していた監督たちからも非常に熱い反応を得て、黒沢監督も驚きの面持であった。またレッドカーペットイベントとしてTV中継もされていたこともあり、街中で一般のモロッコの人々に声を掛けられる一幕もあった。他に名誉賞を受け、特集が組まれたのはアメリカ人俳優、ジェームス・カーン、ハーヴェイ・カイテルら。
映画祭情報トップページへ |