(英語題名表記)
金熊賞
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『Caesar Must Die 』 Paolo & Vittorio Taviani監督 |
銀熊賞-審査員賞
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『Just The Wind』 Bence Fliegauf監督
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銀熊賞-最優秀監督賞 |
Christian Petzold監督: 『Barbara』 でのディレクションに対し |
銀熊賞-最優秀女優賞 |
Racheal Mwanza: 『War Witch』 での演技に対し |
銀熊賞-最優秀男優賞 |
Mikkel Boe Folsgaard: 『A Royal Affair』 での演技に対し |
銀熊賞−特別賞 |
『Sister』 Ulsula Meier 監督 |
アルフレート・バウアー賞 |
『Tabu』 Miguel Gomes 監督 |
最優秀新人作品賞 |
『Kauwboy』 Boudewijn Koole監督 <Generation K-Plus部門> |
国際批評家連盟賞 |
コンペ部門 『Tabu』 Miguel Gomes監督
パノラマ部門 『Atomic Age』 Helene Klotz監督
フォーラム部門 『Hemel』 Sacha Polak監督 |
短編部門銀熊賞 |
『グレートラビット』 和田淳監督 |
ジェネレーション部門・
スペシャルメンション |
『聴こえてる、ふりをしただけ』 今泉かおり監督 |
ジェネレーション部門短編・
スペシャルメンション |
『663114』 平林勇監督 |
*日本からの出品作品はこちらから
今年のカラフルなポスター
Cinemaxx前
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◆概観◆
第62回ベルリン映画祭はフランス映画、『Farewell Queen』で幕を開けた。フランス映画ではあるが、ドイツ人女優ダイアン・クルーガーが主演ということもあり、まずまずの盛り上がりを見せた。今年のベルリンは映画祭開催時はマイナス20度を観測したほどの強烈な寒さ、外を歩くと顔が凍るような感覚を覚えたが、幸い終盤は平年並みに回復した。しかしこの寒さによる客足への影響はほとんど見られなかったのはさすが市民に愛され続けているベルリナーレ(市民はベルリン映画祭をこう呼ぶ)である。毎年、街中に溢れるベルリン映画祭ポスターが目を楽しませてくれるが、今年は非常にカラフルでポップなひときわ目立つデザイン。グレーな冬の街並みに彩りを添えていると好評であった。何気なくつけたテレビからも頻繁に映画祭関連のニュースが流れてくる。まさにベルリン市挙げての一大文化イベントなのである。ちなみに映画祭の最終日は「ベルリン市民への感謝の日」として市民は全作品6ユーロで鑑賞できるとのことである。世界中から集まる外国人参加者たちのニーズにも十分応えつつ、市民から絶大なる支持を得ている。首都開催の映画祭でここまでの成功を収めている例はなかなかないと言っても過言ではないであろう。
上映会場はポツダム広場のメイン会場・シネマコンプレックスを中心にしつつも、市内各所に点在している。キャパシティーも大小さまざまである。ベルリン映画祭関係者によると、会場の確保は使用料の高騰や改装につき営業休止になるなどで毎年頭痛の種だという。(例年パノラマ部門のメイン会場として使用されていた‘ツォー・パラスト’は改装工事中につき今回は使用できず)。
今年もハリウッドからのスターたちが来訪、映画祭を盛り上げた。特に名誉賞受賞のメリル・ストリープは機知に富んだメディアへの受け答えに貫禄を感じさせ、初監督作品の上映に合わせて登場したアンジェリーナ・ジョリーは終始上機嫌、監督としての初映画祭を満喫している様子であった。
日本にいるといまひとつ実感が薄いが、昨年のまさに映画祭の時期はいわゆる‘アラブの春’の真最中であった。一周年に当たる今回は特集のひとつとしてアラブ諸国の民主化に関連したドキュメンタリー等が部門をまたいで上映された。
ベルリン映画祭の中でも特色あるエッジイなプログラミングで毎年注目を集めるフォーラム部門は独自の運営母体を持ち、厳密に言えばベルリン映画祭本体とは別組織である。そして本体とは別の、ボリュームのある独自のカタログを発行してきたが、ベルリン映画祭公式カタログの中に組み込まれ、独自のフォーラムカタログはe-bookとしてダウンロードする形となった。とはいえ、公式カタログの厚さが例年とさほど変わりがないのは長年続けてきた「ドイツ語・英語・フランス語」の三か国語表記を取り止め、ドイツ語・英語のみに切り替えたことが大きいようだ。言うまでもないがIT化に伴い、さまざまな変化が映画祭でも進行している。(それにしてもベルリン映画祭のカタログは重い。。)
Friedrichstadt-Palast前
Friedrichstadt-Palast前
Friedrichstadt-Palast内部
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◆受賞結果◆
コンペティション部門には今回は世界中から厳選された18本が賞を競い合った。昨年は最高賞である金熊賞に輝いたイラン映画『別離』と、ハンガリーのベラ・タール監督の『トリノの馬』の二本が傑出していた感があったが、今年は佳作がひしめき合う混戦状態。結果、マイク・リー監督を委員長とする審査員団はイタリアの80代のベテラン兄弟監督、パウロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟による『Caeser must die』を金熊賞に選出した。刑務所の服役囚たちがシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」を上映するまでを描いた同作は政治的策謀や裏切りを描く古典劇を演じる中で、囚人たちが自分たちの現実を重ねてゆくという、ドラマとドキュメンタリーがない交ぜになったスリリングな作品(実際の囚人たちによって演じられている)。また好評を博していた『Barbara』『Tabu』『War Witch』『A Royal Affair』が審査員賞等、各賞を受賞した。今回のコンペ部門出品作のほとんどがベルリン映画祭初出品の監督の作品というのは新鮮な驚きであった。新たな才能に光を当てようとするベルリン映画祭の姿勢が垣間見られる選考であったと言って良いだろう。
◆日本映画◆
今年も(昨年に続き)日本からのメインコンペティション部門への出品作はなかった。パノラマ部門には1本、荻上直子監督『レンタネコ』が上映された。監督の来訪はなかったが、すでにベルリンでの知名度は抜群の荻上監督の作品だけあって、また世界中にもれなく存在する‘ネコ好き’の人々からの支持も加わって上々の人気であった。
今回、日本映画で特に注目を集めたのは東日本大震災及び福島第一原発事故関係のドキュメンタリー。相当数の応募があった震災関連のドキュメンタリーの中で、厳選された三作品、『ニュークリア・ネイション』『無法地帯』『friends after 3.11』がフォーラム部門において上映された。1986年のチェルノブイリ原発事故の影響から、原発やエネルギー問題に対する関心はひときわ高いドイツ人である。上映中の退席はどの作品も非常に少なく、そして上映後には熱を帯びた質疑応答が繰り広げられた。また、ジェネレーション部門の平林勇監督のアニメーション『663114』も放射能の脅威を描いた寓意に富む作品で、スペシャルメンションを受けた(『663114』とは‘戦後66年の3月11日に起きた4基の原発の事故’の意味だそうである)。受賞の朗報としてはヤン・ヨンヒ監督の『かぞくのくに』(フォーラム部門に出品)が国際アートシアター連盟賞を受賞、『聴こえてる、ふりをしただけ』(今泉かおり監督)が11-14歳の子ども審査員が決定するジェネレーション部門でのスペシャルメンションを受けた。どちらも女性監督が自身の体験をベースに作り上げた作家性豊かな作品である。
日本のニュースに最も多く紹介されたのは和田淳監督作『グレートラビット』の短編部門での銀熊賞であろう。同作品はフランスのプロデューサーにより‘不服従’をテーマに依頼されたアニメーション作品で、映画の国籍としてはフランス映画になる。すでに関係者の間では評価の高い和田監督作品であったが、ベルリン映画祭でのこの受賞により、同監督の作品及び日本の短編アニメーションへの関心がさらなる広がりをみせることが期待される。
フォーラム部門ではほとんど恒例となった感のある日本人監督の小特集も行われた。今回は川島雄三監督がフィーチャーされ、『昨日と今日』『洲崎パラダイス』『幕末太陽傳』の3本を上映。すでに固定客化しつつあるベルリンの日本映画クラシックファンを喜ばせた。
2003年の創設以来、若手育成プラットフォームとして世界的に高い評価と反響を呼び起こし、後進育成の国際的な手本となっているタレントキャンパスに今回は講師のひとりに作曲家、坂本龍一氏が名を連ね、開始前から話題を呼んでいた。環境問題等にも積極的に取り組んでいる坂本氏は『ニュークリア・ネイション』の音楽も担当、同作品の上映に駆け付けるシーンもみられた。
◆EFM(ヨーロピアン・フィルム・マーケット)◆
ベルリン映画祭に併設して展開されるヨーロピアン・フィルム・マーケットは今年は過去最高の大盛況。メインのマーティン・グロピウス会場とマリオット・ホテルという二カ所での開催体制はすっかり定着した。約100カ国から約8000人の参加者があり(前年比15%増)、今回の映画祭のコンペティション作品を中心に商談の成立の報告も多かったとのことである。マーティン・グロピウスにはセールス関係の会社のみならず、各国を代表する公的映画機関も数多くブースを構え、それぞれの国の作品のプロモーションに努めている。日本からは今年も文化庁の海外映画祭出品等支援事業の一環として、ユニ・ジャパンによるジャパン・ブースが設けられた。ブース面積はかなり縮小してしまったとはいえ、拠点があるのは非常にありがたい。このまま続投してもらいたいものである。
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