公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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国際交流

映画祭レポート


◇釜山国際映画祭 2011/10/6-14
  BUSAN International Film Festival


受賞結果
New Currents賞  Morning by Marteza Farshbaf (Iran)
 Nino by Loy Arcenas (Philippines)
Flash Forward賞  LA-BAS-A-Criminal Education
             by Guido Lombardi (Italy)
NETPAC賞  The King of Pigs by YEUN Sang Ho (South Korea)
国際批評家連盟賞  Morning by Marteza Farshbaf (Iran)
PIFF Meccenat賞
(最優秀ドキュメンタリー)
 Sea of Butterfly by Park Bae-il (South Korea)
 ショージとタカオ 井手洋子(日本)
Sonje賞(短編)  Thug Beram by Venkat Amudhan (India)

 <スペシャルメンション>
 日曜大工のすすめ 吉野耕平 (日本)
KNN観客賞  Watch Indian Circus by Mangesh Hadawale (India)
アジアン・フィルムメーカー賞  Tsui Hark (Hong Kong)
コリアン・シネマ賞  Julietta Sichel (Czech Republic)
(『』内は英語題名) *日本からの出品作品はこちらから

◆概観◆

釜山シネマセンター前のレッドカーペット
 
4000人収容可能な野外上映施設
 

 第16回釜山映画祭は新しい釜山映画祭の幕開けともいえる回であった。
 まず映画祭の正式表記を従来の’Pusan International Film Festival (PIFF)’から‘Busan International Film Festival(BIFF) ’に改称した。釜山市の正式名称は何年も前からすでにBusanであり、いずれにしてもいつかは改称するのであるから、新会場で新たなスタートを切る今回がふさわしい時との判断であったそうだ。昨年までは「共同ディレクター」としてディレクター2人体制であったが、今回からはLee Yong-Kwan氏が単独ディレクターとして精力的に動き回っていた。前ディレクターで、現在は名誉委員長として映画祭を支えるKim Dong-ho氏をはじめ、釜山映画祭スタッフたちが長年熱望し、2008年より建設を続けていた「釜山シネマセンター」がついに完成、今回の映画祭よりメイン会場となった。4スクリーンを擁する上映館棟と映画祭事務局等が入る事務棟から成り(*映画祭事務局は今年中に移転予定)、その二つの棟の間に4000人収容可能な野外上映施設を構える。同センターの前は広場に近いつくりで、簡単な飲食ができる店や映画祭グッズ売り場、映画祭インフォメーションデスクなどが並んでおり、記念写真を熱心に撮っている人々の姿も多数見受けられた。グッズの売り上げも上々のようでかなりの賑わいをみせており、会期の後半には売り切れのアイテムも少なくなかった。



人々で賑わう釜山シネマセンター
 

 斬新なデザインの威風堂々としたこの釜山シネマセンター、外観は軒並み好評。が、使い勝手はどうか。不満の声や不備もあったのは確かであるが、今回は辛うじて映画祭のオープニングに間に合った状態で実際にはまだ完成とは言い難く、使い勝手に関しての評価を下すのは来年以降が妥当であろう。釜山シネマセンターは映画祭以外の時期も通年映画を上映、または各種の文化活動に使用してゆく予定とのことである。
 今回を含め、今後は釜山シネマセンターを中心に海雲台エリアの5つの劇場(計36スクリーン)で映画祭は繰り広げられる。映画祭発祥の地である南浦洞<ナンポドン>地区での上映がなくなったのは残念と言えば残念だが、時代の流れなのだろう。主な上映館はシネマセンターの位置するセンタム地区にあるが、野外舞台挨拶やトークショーなどが開催される海雲台ビーチの’BIFFビレッジ‘の活気は健在で、映画祭のゲストの大半が宿泊していたのも、ほとんどのパーティーの会場もこちらの海雲台ビーチ地区のホテル。この二地区、決して遠くはないが徒歩で行き来できる距離ではない(車で10-15分程度)。シャトルバスが巡回してはいたが、夜8時台で終了してしまうのは映画祭としてはいかがなものだろうか。タクシー代が安いとはいえ、映画上映が行われている時間いっぱいは本数を減らしても運行してもらいたいものである。
 今回も大勢の韓国人スター、日本及び諸外国からの俳優・映画関係者が詰めかけ、華やかな様相を呈していた。上映作品は計307本。多岐にわたる作品群が今年も釜山の映画ファンを喜ばせた。また外国人ゲストとしては、今年韓国で大ヒットを記録した作品を英語字幕付きで観られるのも大きな魅力である。それら大ヒット作品の上映には監督・俳優等の舞台挨拶があるというわけでもないのに韓国人の観客もまずまず多かったのが少々不思議であった。公開時に見逃したのか、英語字幕で観てみようと思ってなのか?理解できる言語であれば字幕はない方が明らかに見やすいと思うのだが、、、。
 今年からの試みとして、今までやや手薄感のあったアカデミックな見地から映画を語る場として、釜山シネマフォーラム(Busan Cinema Forum)がスタート。世界の映画学術団体や映画評論家などが参加するセミナー、討論会が10日〜12日の三日間、グランドホテルやBEXCO(Busan Exhibition Convention Center)内で開催され、活発な討議が繰り広げられた。




◆日本映画・日本人ゲスト◆

ARIGATOパーティーでご挨拶される
東京国際映画祭チェアマンの依田巽氏
 

 今年は俳優・オダギリジョー氏がコンペティション部門であるニューカレンツ部門の審査員として参加。俳優として韓国でも知名度の高いオダギリ氏ゆえに大きな話題となった。日本人を審査員に招聘するのはなかなか難しい(=受諾してくれない)とかつて映画祭関係者が嘆いていたが、昨年のワダエミ氏に続き、2年続けて日本人が審査員を務めた。ちなみに日本人俳優としてはオダギリ氏が初とのことである。クロージング作品(原田眞人監督『わが母の記』)をはじめ、今年もほぼすべての部門にわたって日本映画が上映された。映画祭では日本映画は高い人気を誇り続けているとのことで非常に喜ばしい。日本人監督・俳優の参加も常に注目される。韓国でも抜群の人気の妻夫木聡氏は昨年の『悪人』に続き、二年続けて主演作品が公式上映されたのに伴い、同映画祭を訪れた。妻夫木氏に限らず、一度同映画祭を訪ねると、進んで再訪する日本人監督・俳優は数多い。日本から物理的に近く、移動が楽という理由からだけではなく、観客からの温かい言葉や熱い反応が新鮮かつ心に響くのであろう。
 東京国際映画祭及びTIFFCOMが東日本大震災発生以来、世界の映画界の人々から激励や支援を受けたことに感謝し、また日本の現状を海外の人々に知らせるという意味合いも含めたARIGATOパーティーを開催した。


◆アジアン・フィルムマーケット◆

 釜山シネマセンターから徒歩数分の距離にある見本市会場BEXCO内にマーケット(AFM=Asian Film Market)は移動した。香港のフィルマートを思わせる大会場である。昨年までの個室ベースのシークラウドホテルはこみいった商談には適していそうだが、オープンスペースを仕切っているだけのこちらは心理的に気軽に足を運びやすい雰囲気がある。一長一短といったところだろうか。マーケットの会期は従来の映画祭最初の週末から映画祭の後半10日〜13日の4日間に変更された。AFM主催者側の努力の甲斐もあって、前年に比べ参加者・実績ともに目に見えた成果を挙げたとのことである。
 すっかり恒例となり定着している企画マーケット、PPP(Pusan Promotion Plan)は今年から映画祭の正式名称の変更に合わせるようにAPM(Asia Project Market)と改称。選りすぐりの30本の中から熊切和嘉監督による桜庭一樹氏の直木賞受賞作品『私の男』の映画化の企画が釜山市より贈られるBusan Awardを受賞した。個人的にも非常に完成が待ち遠しい企画である。




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