公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

シナリオを書いてみませんか? その5  2012年9月19日掲載

 
 

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●あなたの書きたいことはなんですか?(2)



シナリオを他人に読んでもらい、
自分を高めていきましょう。

 発想を逆さまにすればまた新しいシナリオが生まれると書きましたが、シナリオの始まる前の登場人物の心境とラストシーンのその人物の心境も、ある意味真逆の関係で、大きく違うものでなければなりません。この違いがドラマなのです。しかも、その違いが登場人物の成長につながり、心地よいものであることが、シナリオ成功の秘訣です。

 シナリオを書く上で、この「違い」が必要なら、あらかじめラストシーンの主人公の姿を決めておいて、その正反対の状況をファーストシーンに設定すればいいわけです。誤解があって二人の仲がうまくいってないところから始まり、めでたくその誤解がとけ、二人は幸せになったという物語を書けばいいのです。ただ、それだけでは単なるストーリーです。そこにどうしてその誤解がとけたかを、あなたなりの独自の見解で語らなければなりません。この誤解の解き方に、独自な発想と展開が必要なのです。

 シナリオを書く場合、「偶然の出来事」をよく使います。しかし、これは使い方がむずかしいです。あまり偶然が過ぎるとウソっぽい話になってしまいますし、大きな偶然でないと、ストーリーは面白くなりません。要は「偶然の出来事」を、実社会で起こりうる「必然の出来事」のように見せる工夫が必要なのです。主人公が最初に会うのは偶然でかまいませんが、二度目に会うとなるとちょっと安易さを感じます。私はそんなシナリオに出会うと、「東京には1300万人の人が住んでいるんです。その中で、二人が出会う確率を考えてみて下さい」と注文をつけました。その二人が近くに住んでいるとか、いつも同じ時間帯の電車に乗っているとか、同じ飲み屋に通っているとか、何か理由をつけて欲しいのです。「そんなことをしたらドラマのテンポが遅くなる」と言う人もいますが、そこが工夫です。ちょっと知恵を出せばかならず解決するはずです。

 登場人物の紹介をするとき、必ず主役からみて、どういう関係にある人物かを明確にしていくことをお勧めします。そうすれば、かなり複雑な人間関係も素直に観客の頭に入ってくるはずです。最近の映画ではわざと分かりにくくして、それが謎だと勘違いしている脚本家もいますが、それは間違いです。何もあらたまって明示しなくても、セリフのニューアンスでも充分表現できることですから、常に人物関係を主人公を中心に、明確にして、その上でドラマを進めていって欲しいと思います。

 シナリオを書くためのほんのさわりのみを書きましたが、シナリオは自由です。書きたいものを書きたいように書いて下さい。ただ、他人を誹謗したり、社会に悪影響をもたらすようなものは困ります。シナリオはあくまで他人に読んでもらい、自分の主張を提案し、自分を高めていく手段なのだからです。

<おわり>

執筆者紹介 岡田晋吉

 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 

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