公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

続・シナリオを書いてみませんか? その4  2012年10月24日掲載

 
 

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●セリフ(2)



セリフは耳から入るだけなので、
理解が難しい時があります。

 実際にセリフを書く段になって、方言はどうしますかとよく聞かれます。確かに、方言を使うと、その人の出身地が分かりますし、その人のキャラクターの説明にもなります。しかし、その方言が普段あまり使われてなく、観客に通じなければ何の役にも立ちません。セリフは耳から入ってくるだけで、画面には出ませんから、観客が理解するのが難しいのです。「太陽にほえろ!」で、まだ口跡の定まらない新人の場合、しばしば観客が聞きとれないケースがありました。特に、事件があって、その報告に刑事部屋に飛び込んで来たときのセリフは、早口で喋らなくてはならないこともあって、分かりにくく視聴者からクレイムがつきました。そこで、その報告を受けた側の俳優さんに、そのセリフの中の重要なポイントをオウム返しに言い返してもらうことにしました。「※※で殺人事件です」と飛び込んでくると、「なに!※※」といった具合です。セリフはとにかく観客に正しく伝わらなくてはなりません。ですから、方言も部分的にしか使わない方がいいのではないかと思います。余談ですが、新人刑事のセリフで、セリフの中に、「らりるれろ」が入っていると喋りにくく、NGが続出し苦労しました。そこで、チーフ・ライターにセリフの中に「らりるれろ」は入れないで下さいと無茶な注文をしました。

 いずれにしても、セリフはシナリオの中で、一番重要な部分ですが、本職の脚本家でも、苦手とする人が大勢います。テーマがしっかりしていればいいだろうとか、ストーリーが面白ければいいだろうという人もいますが、シナリオは先ず、セリフだと思います。セリフにリアリティがないと、観客の心を掴むことは出来ません。そんな思いで、セリフを厳選し、感動的なシナリオを書いて下さい。

<その5へつづく>   

執筆者紹介 岡田晋吉

 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 

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