公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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国際交流

映画祭レポート


◇モントリオール世界映画祭 2012/8/23-9/3
  Festival des Films du Monde

 
 
右手の黒い三角の建物がメゾヌーブ劇場入口。奥に野外スクリーンが見える
 

**受賞結果**   **概観**   **シネマ・インペリアル**


**受賞結果**
Grand prix des Americas  『WHERE THE FIRE BURNS』 Ismail Gunes監督 (Turkey) 
Special Grand Prix of the jury
ex aequo
 『INVASION』 Dito Tsintsadze監督 (Germany)
 『ORANGE HONEY』 Imanol Uribe監督 (Spain)
Best Director  『THE LAST SENTENCE』 Jan Troell監督(Sweden)
Best Actress  BRIGITTE HOBMEIER for the film『CLOSED SEASON』
 by Franziska Schlotterer(Germany)
Best Actor  KARL MERKATZ for the film『COMING OF AGE』
 by Sabine Hiebler & Gerhard Ertl (Austria)
Best Screenplay  『SHANGHAI GYPSY』 Marko Nabersnik監督(Slovenia)
 screeplay by Marko Nabersnik (Slovenia)
Best Artistic Contribution  『EXPIATION』 Alexander Proshkin監督(Russia)
Innovation Award  『WINGS』 Yazhou Yang & Bo Yang監督(China)
OPENNESS TO THE WORLD AWARD
(SPECIAL AWARD OF THE 2012 M WFF)
 『カラカラ』 クロード・ガニオン監督(カナダ・日本)
FREEDOM OF SPEECH AWARD
(SPECIAL AWARD OF THE 2012 M WFF)
 『FLOWER SQUARE』 Krsto Papic監督(Croatia)
Golden Zenith
for the Best First Fiction Feature film
 『CASADENTRO』 Joanna Lombardi監督(Peru)
Silver Zenith
for the First Fiction Feature Film
 『THE PHOTOGRAPH』 Maciej Adamek監督
(Poland / Germany / Hungary)
Bronze Zenith
for the First Fiction Feature Film
 『INTO THE DARK』 Thomas Wangsmo監督(Norway)
観客賞  『COMING OF AGE』 Sabine Hiebler & Gerhard Ertl監督
(Austria)
カナダ映画観客賞(長編)  『カラカラ』 クロード・ガニオン監督(カナダ・日本)
ラテンアメリカ映画観客賞  『HAVE YOU SEEN LUPITA?』
 Gonzalo Justiniano監督(Chile)
カナダ映画観客賞(短編)  『MACPHERSON』 Martine Chartrand監督
エキュメニック賞  『CLOSED SEASON』
 Franziska Schlotterer監督(Germany)
エキュメニカル審査員スペシャルメンション  『あなたへ』 降旗康男監督(日本)
(『』内は英語題名) *日本からの出品作品はこちらから

 

**概観**

『カラカラ』舞台挨拶。
工藤夕貴さん、富田めぐみさん、
クロード・ガニオン監督
 
上映後のロビー。
光の当たっている白髪カーリーヘアの
向こうにガニオン監督
 

 「あなたもこの映画のチームなの?すばらしかったわ」「私は日本に行ったことはないけれど、とても美しいと思ったわ」。映画祭6日目の8月28日、『カラカラ』の初めての上映後、観客女性から立て続けに声をかけられた。ロビーは大勢の人々で溢れ、ガニオン監督に握手を求め話しかけようとする人達が渦のようになっている。主演した工藤夕貴さんと工藤さんの友人役を好演した富田めぐみさんが、お互いを讃えギュッと抱き合っている隣で、関係者の方たちも初披露の緊張感から解放されて笑顔になっていた。
 『カラカラ』は、心の空洞を満たそうと沖縄にやってきたカナダ人の元教授が、夫のDVで傷ついた女性に出会い、共に沖縄を旅するロードームービー。タイトルになっている“カラカラ”とは泡盛を入れる陶製の酒器で、中に玉が入っており空のカラカラを振ると「カラカラ」と音がする。「“私を満たして、一杯にして”とカラカラが鳴るのよ」というせりふが作品中に出てくる。カラカラが満たされていくように、沖縄の美しさが心を満たしてゆく。
 ケベック生まれのガニオン監督は、これまで3作品がモントリオールで受賞している。
 その内のひとつ、前作の『KAMATAKI-窯焚-』では2005年に監督賞他5つの賞を受賞。今回の上映についても現地の新聞に数多く取りあげられていた。
 『カラカラ』は共感を持ってモントリオールにあたたかく受け入れられ、特別賞として設けられた Openness to the World Award(世界に開かれた視点賞)とカナダ映画に対する観客賞とのダブル受賞、という結果になった。

観客賞投票箱
 

 そして日本映画としてもう1本コンペ部門に出品された『あなたへ』は、エキュメニカル審査員スペシャルメンション授与という栄誉を得た。13年前のモントリオールで主演男優賞(『鉄道員』)を受賞したお礼に参加したと語った高倉健さんに、映画祭からお返しにプレゼントが贈られた形となった。『あなたへ』は高倉さんにとって205本目の出演作品で、降旗監督とのコンビ20作品目となる。
 エキュメニカル審査員スペシャルメンションとしては1986年に故森田芳光監督の『それから』が選ばれている。

 その他今年のモントリオールで上映された日本映画は、
 震災後の岩手県釜石市の遺体安置所でのルポタージュをもとに君塚監督が映画化した『遺体』、隠岐の島で現在も神事として行われている日本古来の芸能相撲を描く『渾身』、『失恋殺人』『クレイジズム』に続き3年連続での出品となった窪田将治監督の『僕の中のオトコの娘」、初監督作のコンペに選ばれた『その夜の侍』(赤堀雅秋監督)など。犬童・樋口両監督と石田光成役の上地雄輔さんが舞台挨拶を行った『のぼうの城』の初回上映には、現地在住の日本人が多数見受けられた。なお『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)は、第85回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表作品に選出されることが映画祭直後に明らかになった。

 36回目となる今年のモントリオール世界映画祭には、80ヶ国から約400の映画が集まった。
 アジア映画の中では中国映画の勢いが強く、作品上映の他China Film Business Weekも開かれ、ミーティングも積極的に行われていた。野外スクリーンでの星空上映も天候に恵まれ、沢山の人々が上映を楽しんでいた。また、映画祭代表のセルジュ・ロジーク氏が力強く映画祭を運営しているのは例年通りでとても頼もしかった。が、映画祭終了後、次の日に行われた州議会選挙後のケベック党勝利集会にて男が発砲し、一人が命を落とすというニュースが飛び込んできた。与党となったケベック党は、カナダからの州の分離独立を唱えている。治安の良いモントリオールでの発砲事件に市民の間にも衝撃が走ったという。来年以降も安心して映画に集中できる映画祭が開催されるよう心から願っている。

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**シネマ・インペリアル (Cinema Imperial / Imperial Cinema)**

上映前の客席
 

 上記『カラカラ』が上映されたのは、映画館シネマ・インペリアル。映画祭のオープニングやクロージング授賞式、コンペ作品の夜の上映が行われる大劇場メゾヌーブや、Film MarketやDVDライブラリー、プレスコンファレンス会場があるHotel Hyatt Regencyから徒歩数分。上の階には映画祭の事務局が入っている。
 1913年にボードビル劇場としてオープンしたインペリアルは、後に映画上映機器が設置されモントリオールで最も歴史のある映画館となった。
 1995年よりモントリオール世界映画祭が所有しており、現在は非営利団体のCentre Cinema Imperial inc.が管理している。もともと2000席あった客席を、現在は半分以下の932席に減らしている。列の前後の間隔を余裕を持ってとっているため、席の前を人が横切っても立ち上がる必要がないのが快適だ。
 2001年ケベック州より歴史的建造物の指定を受けている。

 
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