公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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国際交流

映画祭レポート


◇上海国際映画祭 2014/6/14-22
  Shanghai International Film Festival / http://www.siff.com/

 

**日本映画上映作品(※上海日本映画週間を除く)**
金爵賞
コンペティション部門
『舞妓はレディ』  周防正行監督
アジア新人賞
サブコンペティション部門
『家路』  久保田直監督
『祖谷物語-おくのひと-』  蔦哲一朗監督
特別招待作品 『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』  行定勲監督
多元視角
パノラマ部門
『舟を編む』  石井裕也監督
『白ゆき姫殺人事件』  中村義洋監督
『太秦ライムライト』  落合賢監督
『横道世之介』  沖田修一監督

 
オープニング会場の上海大劇院は
総工費12億元(1998年竣工)の巨大劇場
 

 今年で17回目を迎えた上海国際映画祭は、国際映画製作者連盟(FIAPF)公認のCompetitive Feature Film Festivalのひとつである。1993年の第1回の映画祭には大島渚監督がコンペ部門の金爵(爵は古代中国の酒器)賞の審査員として参加している。
 今回は35の映画館で385作品が上映され、映画祭の発表によると観客数はのべ30万人、国内外の映画・テレビ関係者ゲスト約2500人、400社以上のマスコミから1300名の報道陣が詰めかけたという。中国本土や香港など中華圏の映画人の他、欧米からも多数のゲストが上海を訪れていた。

 上海大劇院ホールで開かれたオープニングセレモニーは、ニコール・キッドマンらハリウッド俳優、中華圏からは鞏 俐(審査員長)や姜文、ジャッキー・チェン、ジョン・ウーなど、韓国からはソン・ヘギョら豪華な顔ぶれが華を添える盛大な式典だった。
 セレモニーに続いて上映されたオープニング作品は謝晋監督の《舞台姐妹》。上海電影博物館がデジタル復元した作品で、4KのDCPとして色彩も美しく蘇った。

400名のセレブリティが
レッドカーペットに登場した
 
 
手前左側の先端部が
三本足の酒器「爵」
 
 
《教父》《教父2》(『ゴッドファーザー』
シリーズ)4K版は早くも売り切れ
 

 映画祭プログラム内では、今年新たに世界各国の名作を上映する4Kリマスター部門が設けられるほどデジタル化への積極的な取り組みが見られ、『太陽がいっぱい』や『タクシードライバー』『フィラデルフィア物語』などの名作が上映されていた。阮玲玉主演作としてはもう一作品《恋愛与義務》リマスター版が台湾の電影博物館の協力のもと弁士付きで上映された。

 映画とテレビを網羅するマーケットも巨大で、対欧米との共同事業にも大きな発展があったと現地では報道されていた。

上映会場のひとつ大光明電影院
(Grand Theatre)
 

 日本映画はコンペティション部門に選ばれた周防正行監督の『舞妓はレディ』(ワールドプレミア上映)をはじめ、行定勲監督『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』など8作品が上映された。なお、「上海日本映画週間」は、東京では東京国際映画祭の提携企画として行われている「中国映画週間」の主催者、日中友好映画祭実行委員会主導で行われている日本映画上映で、上海国際映画祭本体とは別個の企画とのこと。今回の上海日本映画週間には1979年に中国で公開され記録的人気を呼んだ『君よ憤怒の河を渉れ』出演の中野良子さんもゲストとして招かれていた。日本映画は若い観客を中心にとても人気があり、チケットが売り切れる作品が多数見受けられた。今年より日本映画の選考を担当している蔡剣平さんにお話を伺ったが、センサーシップによる上映制限の中で作品を選ぶことは日本にいると想像できないくらい大変なことだと実感した。が、通常のロードショー上映では上映が叶わない作品も映画祭ならかけられることもある。また経済の中心である上海は北京ほど保守的ではなく、政治色も薄いので映画祭のカラーも違うそうだ。1896年中国で最初に映画が上映されたコスモポリタンの街、かつての上海には総計200もの映画会社が存在していた。川喜多長政が中日間を奔走した街でもある。上海の今後に期待したいと思う。




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