公益財団法人川喜多記念映画文化財団

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パノラマ

シナリオを書いてみませんか? その3  2012年9月4日掲載

 
 

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●ト書きについて(2)



映像になれば分かることなので、
端的なト書きがいいでしょう

 回想シーンを書くとき、「何年前の出来事」かをト書きで明示することがあります。「朝早く」とか、「人っ子一人いない」とか、そのシーン全体の状況を説明することもあります。「どこそこを怪我している」というト書きもあります。こんな状況はセリフでも観客に分からせることができるのですが、ひどく説明的なセリフになってしまいおもしろくありません。映像になれば観客には分かることでもありますし、端的にト書きに書いてしまったほうがいいでしょう。監督が映像で適当に分からせてくれます。

 心情を分からせる為のト書きもよく使われます。しかし、これは充分に注意しなければなりません。シナリオを書いていると、つい自分の分身とも思われる登場人物に気が乗りすぎて、映像に描けない文言を書いてしまうことがあります。前述、シナリオを書くということ(2)に書いたようなケースです。読んでいて、登場人物の心情は手に取るように分かりますが、脚本家の心境もわかってしまい、微笑ましくなります。脚本家はどんなときでも冷静で、客観的なト書きを書かなければなりません。ト書きはその通り撮影することができる文言だけで書き表さなければならないのです。

 とはいえ、私が1000本近く携わったテレビドラマの中で、もっとも驚き、面白いと思ったのは、「犬が笑った」というト書きでした。このときの監督はどうやってこのト書きを映像にすればいいのかと悩んでいましたが、完成された作品を見ると、確かに「犬が笑って」いました。

<その4へつづく>   

執筆者紹介 岡田晋吉

 1935年、「鎌倉」生まれ、慶応義塾大学文学部仏文学科1957年卒業。
 石原裕次郎とは慶応義塾大学の同期である。 1957年、日本テレビ放送網株式会社に入社。アメリカ製テレビ映画の吹き替え担当を経て、1964年から日本製テレビ映画のプロデューサーとなる。 作品は、アメリカ製テレビ映画:「世にも不思議な物語」「幌馬車隊」など、テレビ映画としては、「青春とはなんだ!」「飛び出せ青春」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「あぶない刑事」「いろはの“い”」「俺たちは天使だ!」「忠臣蔵」「白虎隊」「警視K」など多数。 竜雷太を初めとして、松田優作、中村雅俊、勝野洋などを育てた。
 現在は「公益財団法人川喜多記念映画文化財団」の業務執行理事。

 

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